篠笛がつなぐもの

5年前から共にささら獅子舞を伝えてきてくれた仲間が、少年の主張の場で想いを語ってくれました。その言葉を紹介します。

その言葉は、小学生のときに篠笛に出会い、そして、伝統芸能であるささら獅子舞の世界に飛び込んだ想いを、そのままに綴った言葉に心打たれました。一緒にささら獅子舞に携わらせてもらえることに感謝です。これからも、関わり方は変わっても良い形で細く長く、これからも一年に一度でも先輩から受け継いでいるものを伝えていけたら嬉しく思っています。

その言葉を紹介します。

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インターネットやスマートフォンが普及して、今では私たち中学生でも、SNSやオンラインゲームを通して世界中の人とつながることができます。一方で自分の身の周りにいる人とのつながりが希薄化し、広いけれども浅い人間関係になっているように感じます。

私の家は、親と子の核家族です。祖父母の家もすぐに遊びに行ける距離ではありません。近所の方や、地域の方との交流も少なく、家族と友達以外の関わりがあまりありません。

しかし、人と人とのつながりについて改めて考えさせられた体験を私はしました。それは私が地域で活動をしている伝統芸能の「ささら獅子舞」での出来事です。

「ドンドン」と音を響かせ踊る獅子舞。その響く小太鼓を支える澄み切った音色の篠笛。私は5年前、この2つの楽器によって、奏でられてきた300年の歴史に胸を打たれました。そのことがきっかけで保存会に入り、篠笛の練習を始めました。

この「ささら獅子舞」と言われる踊りは、私たちの住む行田に古くから伝わるものです。演奏に使用される篠笛は、中国から伝わってきた、竹で出来た楽器です。リコーダーのように、軽く息を吹き込んで音が出るものではなく、コツをつかまなければ演奏はできません。数年前までは楽譜もなく、耳で聴いて覚えていたそうです。今では楽譜もありますが、30分程度の演目を覚えなければなりません。

月に一度の練習会。秋のお祭りに向け練習を重ねる中で、音の出し方や演目について保存会の方が丁寧に教えてくれます。音がうまく出せない時は、篠笛の難しさに嫌になることもありました。

しかし、練習が終わってお茶を飲むときには、いつもたくさんの人が、話しかけてくれます。練習の反省点、毎日の中学校のこと、私の知らない行田や地域の話題。お母さんや祖母くらいの年齢の方もいて、親戚が集まったような雰囲気です。保存会は、私にとって家庭や学校の次に心のより所となる3番目の大切な場所となっています。

3年前の夏。やっと篠笛の演奏に馴染んできた頃、私は高いラの音が何度やっても出せず苦労していました。

一つの演目が終わって、篠笛の先輩が笑顔で「高い音を出すには息を細く通すといいよ。」と教えてくれました。その通りにしてみると、簡単に音を出すことができました。そのとき先輩は「あなたが先輩になったら、また誰かに吹き方を教えてあげるんだよ」と声をかけてくれました。このとき私は、ささら獅子舞を通して人と人がずっとつながってきたことを実感しました。

ささら獅子舞の踊りや音楽は、そこに住む人々の幸せや五穀豊穣のための祈りです。神社を拠点として地域の人々が、創り上げてきた交流の文化です。獅子舞を演じ、奏でる人とそれを見守る人のお互いの想いが、人を結びつけているのだと思います。

人と人とのつながりは、インターネットやスマートフォンの便利さが結ぶものではありません。画面上のやりとりではなく、直接のコミュニケーションが大切です。

「みんなが一緒にいること」「お互いの想いを共有すること」が人のつながりを強くします。便利な世の中だからこそ、私はこれからも積極的に人と関わり、支え合い、助け合いながら人とのつながりを紡いでいきたいです。

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